この20年以上、毎年夏は母校の同窓会でやってる夏期講習運営があるために「なつやすみ」というモノを取っておらず、人生においては「避暑」というものを経験してなかった私ですが、このたびめでたく、夏の終りに北海道に出かけることが出来ました。(コロナ禍で夏期講習が中止になった上に、忙しくもなかったので。)
▲名飲料「ミルピス」
相棒の森井ユカさんのワーケーション事業に随行するカタチで、北海道最果ての利尻島に10日ほどいたんですが、東京に帰宅後、ロスを1週間以上引きずるほどの、至福のひとときでした。(いま、帰ってきて1週間後くらいなんで、今後も引きずらないとも限らない。)
空の広さ、海の青さ、山のふところ、風に当たるとはどういうことか。朝が来るとは&夜が来るとはどういうことなのか。そして、星・・
あれからこっち、東京で迎える朝も、なんだか違うもののような感じでございます。
さて
その利尻島では、レンタカーであちこちブラブラしていたのですが、図書館で良い発見をいたしましたのでご報告。
(※ちなみに、利尻に入る1日前、前乗りでサッポロに降り立ち、函館本線で約一時間揺れて、滝川というところまで「北泉岳寺」を訪ねましたが、そちらはYou Tubeにてご報告いたします。)
図書館が入っておりますのは、ご当地の多目的たてもの「どんと」(正式名:利尻町交流促進施設「どんと」)
▲「どんと」と利尻富士
日当たりの良い、真新しいロビーで(ていうか、往々にして利尻島の建物は、近年一気にリフォームしたのか、どれもキレイ)、目の前にあるホテルの泊り客だろうか?漁師町には場違いな「シティボーイ」がリモートで誰かと気持ちよさそうに大声でやり取りしてる。
図書館のロビーでもあるので、そこそこ(そこそこね)迷惑。笑
「ボクに興味があるとかいう人がいたら遠慮なく、その人達にボクのことどんどん言ってくれていいんで!」「東京に帰ったら呑みましょうよ!〇〇さんお酒強そうだなあ!」
この1階にはその彼と、エントランスをあけっぱなしの図書館に司書さんひとりとわれわれ二人しかいないので、やる気満々の彼の独り言が筒抜けであります。
そんな環境の中で、フラフラと館内をうろついておりますと、目に飛び込んでまいりましたのが「忠臣蔵物語」の文字!
正式名「日本の古典物語22 忠臣蔵物語」
岩崎書店さんから出てる、河竹繁俊先生がおまとめになった、学童向けの忠臣蔵のおはなしで、内容は主に仮名手本忠臣蔵に沿ったストーリーラインなのだが、「弥作の鎌腹」「鳩の吉右衛門」などの銘々伝(講談ではなく、芝居系)も入っていて「おお!これはめずらしい」と、無我夢中にペラペラ…(ま、北海道とは無関係なんですけど 笑)
歌舞伎にめっぽう精通した(ていうかご専門の)著者の河竹先生ならではのラインナップとアレンジ。
本伝は仮名手本に沿ってるので、たとえば大石内蔵助の放蕩エピソードは「七段目」の輪郭で、お軽や吉右衛門が出てくるのだが、大序だけは、複雑な人間関係や南北朝戦争を持ち出す事も出来ず、ここは講談のように、江戸城内でのエピソードになっている。(兜あらためとか横恋慕は無く、畳替え事件がある)
そんなふうで、登場人物の名前も、史実や講談に基づいて書き直された表記で統一されております(定九郎も「大野郡右衛門(斧 定九郎)」という書き方になっている)。
また、仮名手本だけではなく、たとえば「南部坂」「仙石屋敷」「切腹」は「元禄忠臣蔵」の体裁。
さっき言った「弥作の鎌腹」「鳩の吉右衛門」は「いろは仮名四十七訓」からといったぐあいに、いろんな忠臣蔵モノの芝居の内容をわかりやすくリファインしてまとめた名著でございます。
こりゃ、あたしにとってはゴキゲンな、忠臣蔵芝居の研究書籍。
アレンジの具合についてご紹介申し上げますと、たとえば「鳩の平右衛門」…いや「鳩の吉右衛門」は、前述のようにそもそも原作が仮名手本ではないので、オリジナルストーリーでは仮名手本の五段目で死んでしまった寺岡平右衛門いや寺坂吉右衛門のお父さん・与市兵衛が生きてる世界線、アナザー・ワールドの話になっちゃっているのだが、この本では、「五〜六段目・その後」の体裁にアレンジされており、歌舞伎ファンのわたしなんぞが気になる「七段目のあと、お軽と、おかやと平右衛門はどんな暮らしぶりだったのかな」が、やさしく語られるかっこうになっている。
こどもにやさしい行間と文字の大きさで、自分が小学生の頃に読みふけった怪談や少年探偵団のハードカバーの図書を思い出します。
こりゃさっそく欲しい!と思いましたが、図書カード作って借りて、そのまま東京に持って帰って借りパク…というわけにも参りませんので、その場で検索。
そしたら、どうしたプレミアなのか「日本の古本屋」でも「Amazon」でも5000円以上の値段がついている。
さいわい、あたしは背表紙の焼けたものを1600円くらいで手に入れられました。
表3に図書カードの入ったポケットがあり、図書館廃棄本。貸し出しの履歴はゼロ。
カードに「高嶋町」とだけあるが、調べてみると兵庫県西脇市にそういうお名前の街を見つけた。そこの図書館かなぁ。
ちなみに売ってくれたのは、長野県上田のバリューブックスさん。
利尻で出会えたうれしい一冊でございました💕。