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小説「怪異談 忠臣蔵」04

小説

怪異談 忠臣蔵

〜ゾンビが出てくるやつ〜

 

この作品はフィクションです。文中に出てくる名称と、実在の個人名、団体名とは一切関係がありません。

また、暴力的なシーンが含まれてございます。
また、たいそう昔の設定なので、現代では不適切と思われる表現が含まれることもございます。
あらかじめご了承の上、ご覧くださいませ

 

(連載4)

 

・治療や祈祷

 いっぽう下知が下った医療畑のものは、こぞって研究を重ねたが、絶望的に成果を見せなかったし、どう祈祷しても離(お)ちない。

 治療については、はじめこそ梅干しと南天が効くなどとされたが、次第に手立てがこみいっていった。

 たとえば「噛み付かれた瘡口から血を吸い出して、童貞の小便で洗い、灸をすえるのがよい」などという療法は、ずいぶんと広まった。

 のろまの正体を妖怪として空想で描き、小便を掛けられて、悶え苦しんでる様子に、治療法を添えて記したかわら版も出た

 しかし、それを鵜呑みにして、血を口にしたものが、たちまち乗り移られたりしたものだから、このやり方はやがて廃れることとなる。

 しまいには「毒をもって毒を制す」という発想や、人肉が妙薬として効くといった、一部の迷信もあったことから、自らのろまの犠牲になって死んだと言われる高僧の、ひからびた内臓のミイラから採取して調剤したと言う、怪しげな奇薬が予防に良いとされ出回ったこともあった。

 が、これも寸分の効き目も無く邪毒にしかならなかった。

 心臓部分の粉末が効くとか、やれ肝臓だ胆嚢だと、健康体の人間に能毒もわきまえず振る舞われたのだから、たまったものではない。

 薬効があると信じられてしまった一時期に、粉末はやたら流通してしまい、どの部位の毒を服用した者も、あまねくのろまに変異してしまった薬違い(くすりたがい)。

 だが注目すべきことに、服毒の場合は、直接に噛まれた時とは症状に差異があった。

 つまり、のろまに似た行動(朦朧としたり噛み付こうとしたり)は見せるものの、意思疎通はぼんやりと出来たり、ときどきは正気に帰ることさえあった。

 また、そんな状態の患者に噛まれた者の憑依も遅い。

 それでも次第に容態が悪くなって、しまいには息を引き取る。

 そして、立派なのろまとしてよみがえることには違いはなかった。

 

・民間の取り組み

 難を避けたいと願う庶民は、そこかしこで禁厭や巫呪(ふしゅう)を行ない、鬼神の怒りを退けようと、あちこちで盛んに祭りや豆まきのような、おにやらいを行った。

 こうしたことに乗じて、どの寺社にも所属しない民間の宗教者、祈祷師、占い師が生まれ、彼らは札などを売ってはインチキなまじないをして、荒稼ぎをしていた。

 

 また、噛まれたにせよ、毒を服用したにせよ、変異した者が現れたら、必ず届け出るお触れがあったが、回復を期待して家の奥に憑依者を隔離しかくまう、「かくれのろま」という愚行も流行した。

 噛まれた部位や歯型=噛み跡の形状を祈祷師などが察して吉凶が占われ「そのうちに変異が解ける」と判断されたのろまは、経過を見るために押入れや奥座敷、長屋などにかくまわれたのである。

 回復の期待のほかに、大名家では「身内の恥」として、外聞や面子を第一に考えることから、広い屋敷の奥に「かくれのろま」をする悪習慣が多く見られた。

 ともかく民間療法が役に立たないと知れ渡るまでは、恐ろしいほど多くの犠牲者が出てしまい、騒ぎが済んでひと安心したところで、また不意にのろまが現れるというのを、繰り返したものだった。

 結果的には、うわさ話には耳を貸さずに、ともかく憑依者はふんじばるのが肝要とされ、それから祈祷師か町方役人を呼ぶという手順が次第に主流となる。

 概してどの憑依者も、鉄球を足かせではめて、引きずってるかのように動作がのろいのが特徴で、彼らをふんじばるのは、野犬を取り捕まえるよりもあるていどやさしかった。

 とはいえ噛み付いてくる連中は、たいがいはおそろしいチカラで相手を捉えては生き血を吸ったり、肉を噛みちぎってムシャムシャと食べてしまうことが多かったから、油断がならない。

 

 

 

 

・派生の態様

 いっぽう、祟りを恐れない者たちもいた。

 不幸にも、真相があいまいな「お化け」として処理されるのろまの扱いは、一部で次第に酷薄なものになっていく。

「どうせ娑婆ふさげだ」

 と、のろまをとっ捕まえては飾り立てたり、ひどいのになると人体改造手術をして、上野や浅草などの見世物小屋で出し物にする、心ない一座があった。

 あろうことか岡場所の場末の裏店には、轡をはめた女ののろまの頭に、頭陀袋をかぶせて、娼婦として羊頭狗肉の商売をしていた輩もあったという。

 また、捕獲したのろまを御用でもない武士たちの、刀剣の試し切りのために売りさばく業者も現れた。

 生き胴を斬ったことのない好奇心旺盛な使い手から、思いのほかの引き合いがあったのである。

 

 いっこうに気の利いた対処法が見つからない中で、街にあふれるのろま騒ぎに関して、業を煮やした担当役人のほとんどは、のろまを捕獲しなかった。

 多くの場合、人目に触れないところへ引きずって行って、先述の高田郡兵衛のように、とぼけ澄まして退治してしまうのだった。

 担当の者はみなそれを「慈悲だ」と思ったものだ。

 ところがのろまと誤認されて、斬り殺される酔っぱらいや、耄碌した老人の犠牲者も後を絶たず、日本開闢以来、もっとも厄介な事件となったのである。

 

 ともかく一撃で確実にのろまの運動にとどめを刺すには唯一、急所を頭とし、霊天蓋に強い衝撃を与えてぶち壊せば、相手の運動を止める効果があるということだけは確かだった。

 

 

●<小説「怪異談 忠臣蔵」03はこちら

 

++++++++++++++++++++

〜解説〜

 

空前のパロディ小説。

 

忠臣蔵はどないしたんじゃー一いっ!(笑)
次回「赤穂浅野家の活躍」に、ご期待ください。

さて

維新や敗戦から遠い、江戸庶民の同時や倫理道徳の感覚というものはこうしたステージにあったのではないかというのが、著者のイメージでございます。

 

ゾンビへの対処法は、ロメロルールを採用させて頂いております。

なんかこれ、怪奇モノというより、SFなかんじだなーと、思っております。

 

 

もりい

 

| もりいくすお | - | comments(2) | trackbacks(0) |
コメント
いや〜、挿絵が素敵です。
鼻水垂らした子は何だか赤塚不二夫を思わせるキャラクターですな。
| 山三 | 2019/10/26 10:51 PM |

山三さん
いやしかし、赤穂浪士が出てこないと、面白いようにアクセス数が上がりませんわいっ
| もりいくすお | 2019/10/29 11:59 AM |

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