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小説「怪異談 忠臣蔵」09

小説

怪異談 忠臣蔵

〜ゾンビが出てくるやつ〜
(連載9)
 

 

この作品はフィクションです。文中に出てくる名称と、実在の個人名、団体名とは一切関係がありません。

本編には、暴力的なシーンが含まれてございます。
また、たいそう昔の設定なので、現代では不適切と思われる表現が含まれることもございます。
あらかじめご了承の上、ご覧くださいませ
※お読みの際には「死霊のえじき」のサウンドトラックをBGMにしてください(49min52s分経過したあたりからでもいいかも)
 

 

(連載9)

 

「だんなさまっ!おっお出ましだぁ!」

 外で待っていた中間の新吉が、突棒を取りすがるように抱え込んで、真っ青になってオタオタしている。

 どういうきっかけなのか、誰もいなかった通りの奥のほうから、ワラワラと五〜六人がこっちへ向かってきている。

 旅籠の戸板を填めていた安兵衛は、パンパンと両手を打って塵を払うと、

「出た出た…ひい、ふう、み…」

 と、のろまをひとりずつ指さして数えてから、手際よくたすきを十字に綾取った。

 のろまと見える連中はいずれも町人風で、御囲いから逃げ出した寝巻き姿の者はいない。

「代が変わったな…」

 そう言いながら郡兵衛が茶店から出ると、うしろで戸がピシャリと閉まり、ゴトゴトと心張り棒をかける音がする。

「門口をよく締めておけ!」

 郡兵衛は念を押してそう言うと、シコロにある面頬(口当て)をした。

 飛び血が顔にかからないようにしているところを見ると、郡兵衛はまた、斬る気満々だな?と気にかけながら、安兵衛はのろまを睨みつけた。

 安兵衛と郡兵衛はどちらともなく、その五人に向かって歩き始める。新吉が続く。

 あちこちから聞こえていた複数の念仏や題目、団扇太鼓の音がいっそう大きくなる。

 ドンドコドンドンドンドン

 ドンドコドンドンドンドン

「そこの宿屋はいかがした」

「え?ああ駄目だ駄目だ。店先で三人、奥でふたりばかり縛ってきた。あそこばかりに手間取ってもおられんので、あとを締めてまいった」

 と言う安兵衛の話を、聞いていたのかいなかったのか、郡兵衛は最初に襲いかかってきた町人風ののろまに、自分のほうからも早足で歩み寄っていき、横面に激しくビンタを見舞って相手を張り倒すと、脳天を槍の柄でしたたか殴る。

 安兵衛は捕縄を出して「これこれ」と指し示した。

 チラと見やったが、応えない郡兵衛。

 黙ってのろまの足首だけ縛る。

 のろまは、ばかになって結び目をほどくことはできないので、事はこれで足りるのだ。

 今後を考えて、縄を節約する心得もあった。

「新吉、物陰に注意しろよっ」

「へっ…へえ」

「このようすだと、宿場の者は御囲いののろまとは、ずいぶんやりあっているな…」

「類焼も厄介だ。さっき誰かが言っておったが、火の手がだいぶん近いらしい。火が回ってはこの宿場ひとたまりもないぞ」

「風が無いのが勿怪の幸い。そういえばお前は、江戸の大火の時はおらなんだな」

「そのころは未だ浪人しておったよ」

 ゆとりを装ってやりとりをしているふたりであったが、その目はかしげた首に出刃包丁をぶっ刺した、血みどろのでっぷりした飯盛女風ののろまに釘付けであった。

 脳天をやっつけなければ、急所をやられても、のろまは平気の平左で動いている。

 女が両手を伸ばして「うわ」とこっちに掴みかかってくる。

 こいつをヒラリと体を開いて、落ち着いて尻を蹴り倒す安兵衛。

 縄を節約し短く切って脚だけしっかり縛って、やはりこれも倒したままでおいている。

 そうこうしている間にも、こちらの路地、あちらの横丁といったところから、別ののろまが現れてはふらふら寄ってくる。

 

 

 

 

「ウーム。街で一度にこんな多くののろまを見たのは初めてだ。とても縄が足りんわい」

「で、あろう。これじゃあ手数(てかず)ばかりかかって仕方がない。斬って捨ておいたほうが良いのではないか」

 いつのまにか近寄ってきていた、前掛け姿の、目にかつお節が一節刺さったのろまが、安兵衛の鼻先まで躍りかかってきていた。

「うわっ」

 郡兵衛が咄嗟に、槍の石づきでかつお節男のからだを押し戻すと、男はその槍の柄を両手でグッと掴んだ。

「ええい。離せっ」

 槍を前後させるが、のろまが槍の動きに合わせて頭をグラグラさせながらそれでも離そうとしない。

「小癪なっ!離せ、と言うに!」

 グッと軒の柱にカラダを押し付けられても、黙って槍を掴んで赤い片目をこっちに向けている。

 郡兵衛は槍を掴まれたのも癪に障ったし、のろまの口からだらりとだらしなく伸びた舌の先から垂れる、血の混ざったよだれが、槍の柄に尽くのが面白くなかった。

 のろまの背後に回った安兵衛が、手際よく男の兵児帯を脱って首を柱にくくった。

「ううむ。やたらに出て来おるなっ。これはどういうわけだ」

 そう言ってるそばからひとり、またひとりと虫が湧くようにのろまが這い出してくる。

「なんだ?俺たちを喰らいに集まってきているのか?」

 ふたりにも次第に、ゆとりがなくなってきている。

「新吉っ。お前、その火の見に上がっていろ。郡兵衛ッ、とにかく出来るところまで、此奴らふんじばるのだっ」

 新吉は現場放棄するのを一瞬躊躇したが、済まなそうに「御免なすって」と会釈をすると、突棒を足もとに放り出してヒョイヒョイと火の見櫓を登っていった。

 新吉は地べたでは足手まといでも、せめて高いところからあれこれ安兵衛たちにいろいろと案内できるかと思った。

 しかし、櫓の上は遠くを見渡せて火元の所在はわかっても、眼下はおもいのほか周囲の屋根に視界を阻まれて、少しも出る幕がなかった。

 今はただ、間違ってものろまがこっちまで登ってこないよう、そればかりを祈っている。

 

 ええい、ええいと近寄ってくるのろまたちを順に蹴り倒すふたり。

 一度倒れれば、そう簡単には起きてはこないが、数が数だけにあとから出てきたのろまを蹴り倒しているうちに、前ののろまが起き上がって襲ってくるという具合である。

 倒れたのろまを、顔と言わず尻と言わずおかまいなしに踏んづけながら、そこそこの速さの動作でふたりのほうへやってくる者もいる。

 そうかと思うと近くの格子戸が不意に外れて、バラバラと複数ののろまが雪崩出てきたりして、また数が増え、これまた始末に悪い。

 一度に襲ってこられると、いくら緩慢な相手でも油断がならない。

 とてもひとりずつ結いているいとまがなくなってきた。

 倒れてるものや襲ってくるもの、うろついているものも含めて、いつの間にか安兵衛たちは、四十ほどののろまに囲まれている。

 周囲の家々から聞こえる念仏の声の数は増え、いっそう大きくなっている。

 ドーン、チャーン、ドーン、チャーン

 ドーン、チャーン、ドーン、チャーン

 なーむあーみだーぶ

 なーむあーみだーぶ

 ドンドコドンドンドンドン!

 ドンドコドンドンドンドン!

 怨敵退散!怨敵退散!

 七里結界!七里結界!

「安兵衛っ!これは、もう…」

 と、郡兵衛がそう言ってピタッと心のくらいに槍を取って構えた時、蹄の音といななき、威勢のよい声とバタバタという複数の足音が近寄ってきた。

 ふたりが音のするほうに向き直るとまもなく、建物の角から馬に乗って槍を抱えた武士と、お供をして走ってくる六尺棒や天秤棒、さすまたを小脇にかかえて鉢巻をした男衆(おとこし)数名が派手に飛び出してきた。

 火の付いた松明を持っているものも何人かいる。

「こっちにウヨウヨいやがったーっ!」

 

●<小説「怪異談 忠臣蔵」08はこちら

小説「怪異談 忠臣蔵」10はこちら>●

 

 

◯<いっと最初はこちら。

++++++++++++++++++++

〜解説〜

 

ものがたりはいよいよここからが面白くなるわけでございますが!

なんとなんと!

お時間がいっぱいいっぱいでございます。

(なんつって)

 

空前のパロディ小説。

郡兵衛は口当てをしているっていうのに挿絵でそう描いてない。てへ!

更新はだいたい、土曜日とか日曜日です。

 

え〜。

もう少しだけご辛抱いただきますと、「忠臣蔵」になってまいりますゆえ!

どうぞごひいきに!

 

 


もりい

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